大手2社の売上過去最高に、SMコスト増響く、CVS客足回復 ―― 小売2月期
小売各社の2022年度決算が出揃った。イオン、セブンの大手2社は共に増収増益となり、売上が過去最高益を更新している。イオンはGMS事業の黒字転換が、セブンは米国スピードウェイ社の取得効果が追い風となった。小売業界全体では、コンビニに人流回復の効果が表れ、GMSもコロナ禍の影響が和らぎつつある。食品スーパーは、高騰した電気代などの影響が重く、利益を落とすチェーンが目立った。また、NB品の値上げを受けて各社がオリジナル商品の価格凍結などに踏み切り、PBのシェア率も高まった。
●スーパーは、事業コストの高騰が利益押し下げる
22年度のスーパーマーケット業態では、売上が堅調に推移したものの、利益が前年を割り込むチェーンが多く見られた。他業態と比べて店内の冷蔵・冷凍ケースの構成比が高いため、電気代高騰の影響を色濃く受けている。
イオンのSM事業は営業収益2兆6421億1900万円(前年比4.8%増)、営業利益228億4400万円(同25.2%減)の増収減益で着地した。売上はフジの連結子会社化などの効果が出て増益となったものの、利益はUSMHの苦戦が響いて前年を下回った。
セブンのスーパーストア事業は、営業収益1兆4491億6500万円(同20.0%減)、営業利益121億700万円(同35.6%減)の減収減益だった。イトーヨーカ堂は既存店売上が前年を上回り、ヨークベニマルは前年を割り込んだ。
ライフコーポレーションは、連結で営業収益7654億2600万円(─)、営業収益191億4800万円(同16.5%減)となり、増収減益で着地した。客数は微減、平均客単価は増加している。
●GMS・百貨店は利益改革進む
GMSでは、年始から客足が回復基調に入ったとの声が多く聞かれた。各社の利益構造改革も進んでいる。
イオンのGMS事業は営業収益3趙2690億4200万円(同0.7%減)、営業利益140億5900万円となった。イオンリテールの利益回復が著しく、3年ぶりに黒字化した。
セブンの百貨店・専門店事業は営業収益4637億3900万円(同34.9%減)、営業利益34億3400万円(前期は81億5300万円の赤字)の減収増益だった。前年から一転して黒字転換している。
イズミは、単体で営業収益3630億1100万円(同3.6%増)、営業利益275億7700万円(同1.7%減)の増収減益だった。平均客数は前年をやや割り込んでいるものの、今期は回復基調にある。
●コンビニ、売上好調に推移
コンビニは、大手3社が増収となり、店舗の平均日商も大きく伸びた。極端な客数減から脱しつつある。
セブンの国内CVS事業は営業収益8902億9300万円(同2.0%増)、営業利益2320億3300万円(同3.9%増)の増収増益だった。全店の平均日商は67万円(前年差2万4000円増)。既存店の平均客数は0.3%増、客単価は3.3%増だった。
ファミリーマートは営業収益4514億6100万円(同4.6%減)、事業利益653億700万円(同8.3%減)だった。全店の平均日商は51万1000円(前年差1万8000円増)。既存店の平均客数は1.1%増、平均客単価は2.2%増となった。
ローソンは、連結で営業総収入9986億2100万円(同41.6%増)、営業利益550億5600万円(同16.9%増)。増収増益となり、営業総収入が過去最高を更新した。
全店の平均日販は52万2000円(前年差2万4000円増)。既存店の平均客数は前年比3.6%増、平均各単価は0.9%増だった。
新社長に尾家健太郎氏 ―― 尾家産業
尾家産業は13日開催の取締役会において、尾家健太郎取締役常務執行役員の代表取締役社長就任を決議した。6月27日開催の定時株主総会および取締役会において正式に決定する。尾家啓二社長は代表権のある会長に就任する。
【代表取締役の異動】
▽代表取締役社長執行役員管理本部長(取締役常務執行役員管理本部長)尾家健太郎
【執行役員の異動】(6月27日)
▽執行役員管理本部副本部長兼人事総務部長 畑中則行(新任)
尾家健太郎氏(おいえ・けんたろう)1974年1月9日生まれ49歳、大阪府出身。京都大学大学院農学研究科卒。尾家啓二社長の長男。
1998年サントリー入社、2008年7月尾家産業入社、16年執行役員管理本部副本部長、17年取締役管理本部長(現任)、同年11月経営企画室長(現任)、21年業務統括部長(現任)、22年常務執行役員(現任)
「常に変化、進歩する」 海外戦略は“地産地消”で ―― 極洋井上社長
井上社長
山口東京支社長
極洋は14日、東京支社極洋会(会長=伊藤晴彦中央魚類社長)の総会を、東京・永田町のザ・キャピトルホテル東急で開催した。
井上誠社長は前期概況について、「前期の前半は非常に調子が良く9月まで好調に推移したが、12月に鮭、カニ、えびの当社が得意とする3アイテムが苦戦した。前半の貯金で通期では増収増益で終われそうだ」とした。また、4月1日により導入した執行役員制度、事業本部制や新人事制度について説明した。
「各施策を進め、目標の売上高3000億円以上を目指す。当社は、常に変化し、進歩していく」とした。
海外戦略では、「米国、欧州、東南アジアで地産地消を進める。米国は先般、カニカマ工場建設を発表した。東南アジアではベトナムでの製造子会社設立、工場建設を公表した。欧州については、現在、オランダなどを検討している」とした。
東京支社、今期800億へ
山口敬三取締役東京支社長は支社業績など報告した。
東京支社の前期(23年3月期)の販売状況は水産部門は売上高479億円、業務食品部門は売上高283億円で、支社合計で762億円となり、前期比で増収となる見込みだ。収益面については居酒屋・レストランなど外食・業務ルート向けの冷凍食品販売は伸長した。しかし、鮭鱒やエビ、かになどの水産品は高値の中で荷動きが鈍化し、苦戦を強いられる形となり、減益となった。
今期は東京支社は売上高800億円の目標に向け売上拡大、収益安定化に注力する。
初の「焼きライン」導入 ―― イートアンドフーズ
CVS中心に販売予定
イートアンドフーズは18日、関東第1工場(群馬県板倉町)で、「レンジで美味しく食べられる焼き目つき餃子(仮)」の製造ラインを新設、2023年夏に稼働を開始すると発表した。焼きラインの導入は同社初となる。
同社では、2023年1月より稼働を開始した関東第3工場の生産設備増強を受け、新たなカテゴリーの商品開発に取組んでおり、今回、関東第1工場でレンジ調理品の焼き目つき餃子製造ラインの新設を決定したもの。独自の厚い鉄板を使用し、王将店舗で餃子職人が均一に焼き目をつけた焼き方〝神焼き〟を再現、商品専用の蒸し加熱装置で水分を失わない蒸し工程も実現した。
ライン新設に当たり、成型機を進化・開発。餃子成型から包装工程までをオートメーション化することも実現している。
仲田浩康社長は、「第3工場稼働により、旧ラインの更新を進めている。新たな商品などを検討している。今回の焼きラインはその一環。コンビニエンス向けに販売をスタートする。通常コンビニで販売されているのは、5粒が多いが、当社では8粒を提供する」としている。