市場の拡大続く ―― 小売・21年度・冷食販売状況
本紙ではこのほど、全国の流通チェーンを対象に2021年度の冷凍食品の販売状況を調査した。回答があった8社のうち、7社の売上が前年を上回った。20年に巣ごもり特需で躍進した家庭用冷凍食品はトライアルユーザーの一定層がリピーターとして定着し、売上が引き続き伸長している。流通各社が冷凍食品を伸長分野と捉え、新店・改装店などで売場の拡大に取り組んだことも市場の拡大に寄与したと見られる。
カテゴリー別の売上を見ると、すべてのチェーンで「調理品(フライ・コロッケ類)」「麺類」「スナック類」の売上が前年を上回った。テレワーク中の昼食やおやつとして食べられることが増えた。
「弁当類」「中華調理品」「グラタン・ピザ」も7社で伸長するなど好調で、中でも「中華」カテゴリーは売上が前年を上回った企業のすべてが2桁を超える伸長率を記録した。新商品の売れ筋ランキングでも餃子類が躍進している。21年の冷凍食品全体の売上を牽引したといえるだろう。
20年度に大きく伸びた「冷凍野菜」は、8社中5社の売上が前年を超えた。他のカテゴリーの好調と比較して伸びはやや小幅だった。ただし、21年の小売市場では前年の手づくり需要のカウンターで青果物が売上を落としている。この生鮮品の苦戦と比べれば、前年超えで推移した冷凍野菜の実績は堅調だったと見るべきだ。家庭内の調理で使う野菜の一部が、生鮮品から冷凍野菜に切り替わった可能性がある。
お弁当冷食は、8社中4社の売上が前年を上回った。売場の縮小が続いていることを勘案すれば善戦といえる進捗だ。直近の店頭では、弁当品をリーチイン什器に陳列する際に縦置きに切り替えたり、弁当のコーナー化自体を廃止して商品を惣菜の各商品の上段に組み込んだりするなど、売場を縮小しながらMDの工夫で売上や商品数を維持しようという動きが生まれている。
新たな売場づくりが今後の小売市場に浸透するかどうかは不透明だが、今年度は売場のトレンドの変化についても注意を払いながらこの部門の先行きを見ていく必要がありそうだ。
断トツの食品卸目指す、既存、商品、ロジを強化 ―― 日本アクセス・新中計
佐々木社長
日本アクセスは5月26日、東京大崎の同社本社で決算説明会を開催し、佐々木淳一社長が、今期よりスタートした第8次中計「構造改革2024~新たなサービス・価値の創造~」について説明した。
新中計では、経営基本方針に①成長・競争優位の確立②収益構造改革③経営基盤改革を掲げ、既存領域の拡大、ロジスティクス事業の強化、ECビジネスの取組み推進、商品開発機能の強化やDXの推進などを取組むことで、「持続的な成長を実現する3カ年とし、断トツの食品総合卸売企業を目指す」(佐々木社長)。
9つの重点施策として、①商品開発強化への取組み(生鮮、デリカ、アクセスブランド、MD戦略商品)②フルライン卸戦略の実行③チルドプラットフォームの構築④海外事業のビジネスモデル構築⑤Eコマースビジネスの取組拡大⑥フローズンマザーセンター構築への取組強化⑦物流拠点整備計画の実行⑧DX推進⑨SDGsへの貢献・取組強化を設定する。
チルドプラットフォームの構築では、情報・物流・商品開発・企画販促を統合したチルドプラットフォームの確立で、商物融合の付加価値サービスを提供。3カ年で1000億円の増収を計画する。
ECビジネスでは、取組をさらに進化、22年にはフローズンの同社倉出し機能を活用した、冷凍宅配事業構築を目指し、首都圏を中心に実証実験を開始する予定。
フローズンマザーセンター構築では、フローズン業界全体で一貫パレチゼーション導入を目指し、冷凍物流におけるパレット化(T11型パレット標準化)とレンタルパレットの共有を推進。22年1月に関東フローズンマザーセンター(埼玉県加須市)を稼働、22年度近畿、23年中部・東北、24年に九州に同センターを順次稼働させる。
中計の定量計画は最終年度の2024年度連結売上高2兆4203億円(21年度比14.1%増)、経常利益278億円(同16.3%増)、経常利益率1.15%(同0.02%プラス)、当期純利益189億円(同16.0%増)を目指す。
総会を3年ぶりリアル開催、環境・検査についての2講演も ―― 輸入冷凍野菜品質安全協議会
講演会もリアルで開催
輸入冷凍野菜品質安全協議会(凍菜協、川﨑順司会長)5月26日、東京都港区のメルパルク東京で第19回総会を開いた。
川﨑会長の挨拶に続いて、「令和3年度事業報告」「同収支報告」「令和4年度事業計画案及び予算案」「令和4年度の役員・委員会役員専任」の4議案を諮り、満場一致で可決した。4号議案の役員改選では、役員全員が再任した。
引き続き開催した講演会では、白坂信和厚生労働省医薬・生活衛生局食品監視安全課輸入食品安全対策室輸出国査察専門官による「令和4年度の輸入食品監査指導計画について」、冷凍食品新聞社代表取締役社長永沼博明による「冷凍野菜2022 コロナ禍の中野菜市場はいかに変化し、変化していくか」の2講演を実施した。講演で白坂専門官は、輸入食品の検査現状、今年度の監視指導計画の方針などについて説明。質疑応答では、講演で説明があった輸入者に対する輸入前相談時に違反が判明する例が多いという内容について、川﨑会長から「検査をしないレベルで違反がわかる例がこれほど多いとは驚きだ」という声が上がり、輸入に対するウクライナ情勢の影響について、リステリア・モノサイトゲネス問題について、容器包装のポジティブリスト制度の英訳説明書の有無についてなど意見交換が図られた。
懇親会では佐藤勝彦副会長が登壇して挨拶した。佐藤副会長は「コロナ禍でこれまで経験したことがない様々な問題が生まれた。そのような中で、冷凍野菜の認知度が高まり、一般の生活者にも品質に評価を頂いている、今後も安全確保に全力を注ぎ、会員と共に冷凍野菜の更なる発展を図っていきたい」と語った。
乾杯発声は木村均(一社)日本冷凍食品協会専務理事が行った。
惣菜市場規模 10兆1149億円に
(一社)日本惣菜協会は11日、2021年の惣菜市場規模を発表した。惣菜トータルマーケットは10兆1149億円(前年比3.0%増)となった。11年ぶりに前年を下回った前年から回復したものの、19年度比では前年比2%減で着地した。
業態別の市場規模は、専門店・他2兆7、472億円(同0.5%増)、百貨店3117億円(同6.7%増)、総合スーパー9075億円(同3.1%増)、食品スーパー2兆9470億円(同6.6%増)、CVS3兆2015億円(同1.6%増)となった。
すべてのチャネルで売上が回復した。中でも、食品スーパー、総合スーパーなどの回復が顕著だった。新型コロナウイルス発生当初からバラ売りをパック売りに切り替え、時間帯別や食トレンドに対応した販売施策などを展開してきたことなどが奏功している。