通期利益確保スピード持って ―― ニチレイ・大櫛社長会見
ニチレイは7日、年末会見を行った。今年もコロナ禍の中、WEBでの会見となった。会見はニチレイ大櫛顕也社長、ニチレイフーズ竹永雅彦社長、ニチレイフレッシュ田邉弥社長ニチレイロジグループ本社梅澤一彦社長が出席、それぞれ21年の振り返りと22年の展望を語った。大櫛顕也社長は次期中計に関して「サステナビィティ経営を軸として考える」と表明、その上で「新たな競争優位性を獲得し、企業価値の向上を目指す」とした。本紙では大櫛社長の談話を全文掲載する。
新型コロナウイルスの感染状況は、日本国内では5波が終息し、10月1日に緊急事態宣言が解除された。飲食店の営業時間の短縮要請も解除されリベンシ消費という言葉が生まれるなど情勢変化が起こっている。
一方、先般新型変異株のオミクロンが確認されるなど、今後の情勢は不透明だ。当社グループに於いてもタイのチキン加工品でワーカー不足により供給能力が低下するなど大きな影響を受けているが、各種施策を実行し対応していく。
第2四半期までの業績は11月2日に開示した通りグループ全体では増収減益となった。
現在のところ通期では売上高6000億円、営業利益330億円を見込んでいる。収益の源泉である売上高は回復伸長しているが営業利益は当初見込みから20億円の下方修正とした。
原材料や仕入れコストの上昇等があり非常に厳しい状況ではあるが各事事業会社でスピード感を持った対応を進める。
先月COP26が開催され、当社グループもサステナビリティ経営に注力する。国連が提唱する「国連グローバルコンパクト」に署名し、本年11月15日に参加企業として登録された。
人権の保護、不当労働の排除、環境への対応、腐敗防止に関する10原則を順守、実践し事業活動を展開していく。
また昨年、5つの重要事項(マテリアリティ)を特定したが、今年度はグループとしての施策とKPIを策定した。
気候変動の取り組みにおいては、昨年先んじて2030年度のCO2排出削減目標数値を2015年度比30%減と公表したが今回のグループKPIでは、15年度比50%削減と目標数値を引き上げた。グループのサステナビリティ基本方針についても現在策定を進めている。
海外事業に関しては海外売上高比率30%を目標として掲げている。英国とポーランドでM&Aを実施した。海外事業ではオーガニックの成長に加え、M&Aやアライアンスも含めて規模の拡大を進めていく。
新規事業の取り組みでは、新たな価値を創造していくためには人財育成が最も重要だ。特にイノベーティブな人材育成のためにISO56000に基づくイノベーションマネージングシステムIMSを導入した。IMSに基づきいくつかの取り組みは実証実験の段階だ。
各事業においては、ITやDXを活用した業務効率化と価値創出を進めている。(詳細を本紙に掲載)
「体質強化の取組み進む」 ―― 日本水産・浜田社長
日本水産は1日、年末記者会見をweb形式で開いた。浜田晋吾社長は、「コロナが最大の課題」としながら、今年度の概況、取組み、来期の方向性など要旨以下の通り述べた。
当社では今年度より国内養殖事業の改善、国内チルド事業の改善、新規事業の発掘、生産性の革新など体質強化に取組んでいる。
国内養殖事業については、コスト削減・生産性向上による収益改善を図っている。22年3月期で営業利益は大きく改善する見込みだ。国内チルド事業はCVSの売上高・来店客数の回復は鈍く、販売面ではまだ苦戦が続く見込みだが、生産効率をさらに高めるとともに、新規カテゴリーへの参入を図るために工場集約・再配置などを実施。今期第2四半期段階で営業利益は改善した。
新規事業の開発は今年3月1日付で社長直轄の「事業開発部」を新設。活動している。まだ具体的な成果は出ていないが、この取組みは一過性にせず、社内にアントレプレナー精神風土を定着させたい。
当社の2022年第2四半期業績は昨年の反動もあり海外水産・食品及び国内水産が好調で大幅な増収増益。各段階損益において上半期の最高益を更新した。中間配当も前期比2円増配した。通期では海外の食のリバウンド消費が落ち着き始めたうえ、人件費や原料等のコストアップ、サプライチェーンの停滞など懸念があるが、体質強化の取組みも進みつつあることから年間計画を上方修正した。通期の営業利益・経常利益はこのままで推移すれば過去最高益となる見通しだ。
2022年度は1年間延期していた新中計が始動する。直近10年でみると利益体質になってきたが、踊り場を迎えている。原点に立ち戻りミッションから再考し、再成長を目指す必要がある。次期中計はその第1歩と考えている。
経営方針の考え方は、ニッスイ110年以上にわたる歴史を土台とし、CSR志向の行動を積み重ね、ビジョンやミッションを実現する。2030年のニッスイグループのありたい姿とする長期ビジョンはバックキャスト思考で「ありたい姿」を実現するために収益モデルの変革も必要だと考えている。来期よりスタートする中計をその第1ステージとしていく。
冷食、介護食拡大図る ―― マルハニチロ・池見社長
マルハニチロは2日、東京・豊洲の本社で年末会見を開き、池見賢社長は今期の概況、中計「Innovation toward2021」の進捗、次期中計の方法性などを語った。
事業のコロナへの影響については、「巣ごもり需要が定着したことで、家庭用冷凍食品や中食向け販売は堅調に推移。水産物においても家庭内消費の増加が出てきた。外食需要は爆発的な回復はないものの、ワクチン接種の進捗などもあり人流が増加、回復が見られる状況にある。しかし、高級水産物は以前不振が続いており宴会等が回復しないと難しい状況だ。海外は欧米市場にける水産物の需要は大幅回復。一方で海外の加工拠点のタイ、ベトナムは回復状況にあるが、コロナ禍の影響が大きくタイは85%、ベトナムは20%程度の稼働だ」とした。
加工セグメントについては、「前期同様、上期も増収増益で推移した。家庭用冷食はマーケット拡大の中で順調に推移しているが、原料高騰もあり先般値上げを発表させていただいた。業務用食品は、外食・ホテル向けは依然として苦戦しているが、C&C、量販惣菜、CVS、生協宅配、介護食市場が強化でき前期に比べて大きく伸長している」とした。
中計については、「今期は最終年度。当初目標に対し、収益認識基準が600億円あるものの大幅未達だ。未達要因は3つ。一つ目は大洋エーアンドエフの海外巻き網事業、二つ目はマグロ完全養殖事業、三つ目が北米鮭鱒事業。これらは想定外でかなりの損失が発生した」とした。(詳細を本紙に掲載)