冷凍食品新聞社 発行日(週刊・毎週月曜日)購読料1年33,600円(+税)昭和44年6月19日第三種郵便物認可

今週のヘッドライン|2021年1月第4週号

小売・前回の経験生かす、ストック型は伸長傾向―― 供給面での影響軽微 緊急事態宣言

 本紙ではこのほど、大手流通各社に緊急事態宣言発令による店頭販売の影響について話を聞いた。冷凍食品の販売状況はチェーンによってまちまちだが、2020年4月~5月の緊急事態宣言発令時と比べて冷食の買い溜め傾向は高まっておらず、商品供給もひっ迫していないという声が多かった。一部ではチラシの取りやめ、物流網の強化や、需要が伸びるであろう商品をリストアップして在庫対応を進めるなど入念な準備を進めており、安定的な供給体制を維持している。

 ライフコーポレーションでは、緊急事態宣言発令後(1月8日~10日)に首都圏の冷凍食品の売上が、前週比146%と大きく伸びている。乾麺、レトルトカレーなどの動きも良く、ストック型商品全般が好調だという。一方で、平均客数の減少率と平均客単価の増加率については前週と比べて大きな動きは見られなかった。また、前回の緊急事態宣言発令時のような極端な買い溜めも発生しておらず、昨年からセミセルフレジの導入による混雑緩和などの取組を行ってきたことも奏功して、「心配していたような商品の欠品や、入店制限を行うような混雑は起きなかった」(同社)。販売戦略については、チラシの配布を首都圏で9日から、近畿圏で16日から取りやめた。来店客が集中することを避けるための措置で、商品はチラシに掲載を予定していた特価で販売しているという。
 イオンでは、緊急事態宣言によって売上に大きな影響は出ていない。冷凍食品の売上は前年から好調に推移しており、1月もこの傾向が継続。商品はやや多めに発注しているが、メーカーからの供給も安定しており、品切れは発生していない。客足については、一部の大型商業施設で専門店の営業時間を短縮したことなどを受けて、夜間にやや鈍る傾向も見られた。
 イトーヨーカ堂も、店頭の売上について前回の緊急事態宣言発令時のような大きな動きはなく、品切れも発生していない。チラシのの配布も継続しているが、昨年から日替わりの特売の期間延長したことなども奏功して、極端な混雑は発生していないという。
 シジシーでは、緊急事態宣言の発令後、加盟店の店頭の売上がやや伸びる傾向が見られた。昨年より、客数減を客単価の向上で補い、売上が前年を上回る傾向が継続しているものの、緊急事態宣言の発令によって極端な買い溜め傾向は生れなかった。同社では、新型コロナウイルスの再拡大に備えて冷凍食品の在庫は数か月分を確保しており、加盟店への商品供給も安定している。
 日本生協連では、会員生協の宅配などで、冷凍食品のほか、乾麺などのストック型商品の売上が伸長した。一部の会員生協では、抽選による宅配の品目が増えているという。なお、日本生協連では昨年から、前回の緊急事態宣言の発令時に供給がひっ迫した商品をリストアップして在庫を確保し、季節商品の製造ラインを切り替えて主力商品の製造を強化するなど、商品の安定供給のための取組を進めており、前回の緊急事態宣言発令時のような商品供給のひっ迫は起きていない。

メーカー・市場の動向注視

 今回の緊急事態宣言に当たり、主要冷凍食品メーカーに供給面に関わる対応を聞いた。各社、既に前回の緊急事態宣言後、生産体制の強化および在庫の確保は着実に進んでおり、今回の宣言に伴っての特別な対応は行われていないようだ。また、前回と異なり地域が限定されていること、学校が通常通りであることも急激な需要増加、在庫の逼迫にはつながらないと想定している。
 ニチレイフーズは「昨年の4月の緊急事態宣言後にも増産体制はしっかりとして生産力増強をした。今回の宣言で新たに増産体制を敷いたということはないが、20年度4月から増産体制の強化ということで進めてきたので、昨年来引き続き生産能力の強化を実施していると理解して頂きたい」としている。
 味の素冷凍食品は「1月のエリア限定の緊急事態宣言発令後、出荷などに大きな変化は出ていない。前回は買いだめ等の動きがあったが、今回生活者は冷静だ。昨年来家庭用冷凍食品の出荷は高止まりの傾向があり、当社は業務用とのバランスを取りながら生産対応している。今後についても市場の動向を見ながら、食のインフラとして安定供給に努めていく」としている。
 また、「年末にかけて在庫を積み増しており、特に特別な対応(増産)などは予定していない。推移を見ながら判断する」(日本水産)、「特に増産は行わない。事態の推移を見ながら判断する」(テーブルマーク)と状況を見ながらの判断とするメーカーが見られる他、マルハニチロでは緊急事態宣言後の状況について「第1波のような急激な需要増は無いが、一部の商品は増産体制をとっている」としている。

食卓系商品を強化―― マルハニチロ・新商品

マルハニチロ・新商品
カツの大きさ、厚みにこだわり

 マルハニチロは15日、2021家庭用冷凍食品として新商品14品、リニューアル品11品の計25品を発表した。発売日は3月1日。
 家庭用では家庭での食事機会の増加の中で、調理負担が無く、汎用性の高い食卓向け惣菜を強化する。一押し商品として「ガブッと!四元豚のロースかつ」をラインアップ。フランス産四元豚ロース肉を使用し、メッシュサイズの大きい専用パン粉でサクッと軽い食感に仕上げた。1個43gで揚げる前の肉の厚みは15㎜とカツの大きさ、厚みにこだわった。食卓系では、MSC認証取得の身厚のアラスカ産スケトウダラを使用し見た目のボリューム感にこだわった「ガブッと!白身魚フライ」、鶏むね肉を使用した「かしわ天」などもラインアップした。
 〈WILDish〉シリーズでは、同シリーズ初の食卓系「若鶏から揚げ」を投入。若鶏のもも肉を一口サイズにカットして、塩麹で旨味を引き立てた。旨みのある塩だれをかけた豚カルビ入りの「ねぎ塩豚カルビ焼そば」、牛カルビ肉とにんにくの芽を具材とした旨辛な「牛カルビ焼肉めし」も投入する。
 米飯では、「炙り焼きあなごめし」。ピザでは「つるし燻りベーコンピザ」を投入する。
 弁当では、お好み焼を弁当サイズにした、「パクッとお好み焼き」、直火焼きで香ばしく仕立てたつくねバーグに甘酢たれをかけた「直火焼きつくねバーグ甘酢だれ」、鶏ひき肉に輪切りのさつまいもをのせて天ぷらに仕立てた「さつまいもと鶏ひき肉の天ぷら」、和惣菜アソート品では、「おいしく減塩ひじき煮ごまあえきんぴら」を発売。
 凍菜では、「すぐに使えるかぼちゃ」「すぐに使えるむきえだまめ」をラインアップする。

既存品に注力、新たな価値の商品も育成 ―― ケイエス冷凍食品・池内社長

ケイエス冷凍食品・池内社長

 ケイエス冷凍食品は17日に会見を開き、1月1日付で就任した池内良彰社長が2020年の業績の総括、今後の取り組みなどについて説明した。  池内社長は2020年の業績について、「新型コロナウイルスの感染拡大によって業務用を中心に売上が減少した。市販用も冷凍食品もお弁当商材の比率が高く、業務用の落ち込みをカバーするには至らなかった」と説明。
 今後の見通しについては、「年初に緊急事態宣言が再発されたことが業務用の販売に影響を与える。市場の回復には時間がかかり、21年度も引き続き厳しい経営環境となると見ている」との認識を示した。
 今後の取組としては、同社の強みである鶏つくね串シリーズに代表される小型ミンチ加工品の技術を生かしながら、付加価値の高い商品づくりを進める。既存品に注力とすると共に、植物由来原料を使った業務用の「ソイリーボール」、日本アクセス「フローズン・アワード」でメディア特別賞を受賞した市販用の「国産鶏肉使用肉だんご(プレーン)」など、新たな価値を持った商品の育成にも取り組んでいく方針だ。
 販売戦略については、ニューノーマルの市場で伸びているチャネルへの提案を強化するなど、営業政策の見直しを図ると説明した。

会社所在地

〒160-0008
東京都新宿区三栄町24番地
黒田ビル2階