引き続き試練の年 ―― 業務用冷凍食品
都内で行われた業務用座談会
2020年の業務用冷凍食品市場はライフスタイルの変化に加え、人手不足の加速、東京オリンピックの開催、それに伴うインバウンド需要の増加が後押しし、さらなる拡大へ向けたスタートの年となるはずだった。状況を一般させたのは新型コロナウイルスの感染拡大だ。外出自粛や時短営業が叫ばれる中で外食を中心とした各業態が深刻なダメージを負い、第3波が到来する今、先の見えない状況は続いている。21年も引き続き試練の年となるだろう。12月に本紙が実施した業務用メーカー6社を対象にした座談会(2社は別途取材)では非常に厳しかった20年を振り返ってもらうとともに、いかにその中で試行錯誤し、21年につながるヒントを見出してきたかを各社に聞いた。そこで再認識させられたのはやはり「定番品の強さ」。困難な状況だからこそ、自社の強みを最大限に発揮した定番アイテムの力が一層発揮される状況となっている。
今回の取材では20年業務用市場におけるチャネル毎の販売状況の明暗が一層明確なものとなった。ホテル、居酒屋に代表される外食の大幅な売上減は言うまでもなく、テレワークが拡大する中での産業給食の不振、都心店を中心としたコンビニ業態における落ち込みが見られた。3月の一斉休校の有った学校給食については、一時的に大幅な落ち込みを見せたが、夏休み期間の短縮もあり回復傾向に。惣菜は健闘しているものの、やはり厳しい状況は変わらず、病院・老健向けのみが伸長している。
例年であれば販売状況の好不調をチャネルだけで測ることは難しく、メーカーごとに差が出る所だが、今回、話を聞いていくと各社の状況がが見事に一致した。それだけに企業単独の努力には限界があり今回のコロナの市場に与える影響の大きさを感じさせる。
コロナ禍における主な対応策に挙がったのは、やはり惣菜など比較的ダメージが少ない業態への注力やテイクアウト、デリバリー、ECといった新たな販路の開拓、そしてWebを積極的に活用した情報発信の面でのサポートだ。これら取組みは現在の状況を一変させるような劇的な効果を持つものではないが、市場の回復を待つ中で、いかにダメージを最小限に抑えるかを考え実行されている。
もちろんコロナ禍においての気付きもあった。今回、多くのメーカーからが再認識したこととして挙がったのは、やはりこういったイレギュラーの状況下における定番品の強さ。新たなチャレンジもなかなか難しいことも背景にはもちろんあるが、安心感もあり計算できる定番品へのユーザーからの期待はますます高まった。
市場はまだまだ戻らない。21年は厳しい状況になんとか対応しつつ、一方で収束後に広がる新しい市場に向けた準備を着々と進めていかなければならない。
売上急伸も伸び率は鈍化、特売の方針は両社に違いも ―― ライフ・ヤオコー年末会見
岩崎社長
川野社長
ライフコーポレーション、ヤオコーは12月、自社の2020年度の直近業績と今後の取組などについて公表した。
ライフコーポレーションの既存店ベースの売上高は、第1Qが前期比110%(平均客数同94.3%)、第2Qが同106.7%(同93.7%)、第3Qが同101.7%(同93.6%)で推移した。新型コロナウイルス感染拡大に伴って平均客数が目減りしたものの、買いだめ需要が高まったことなどで来店客一人当たりの平均客単価が向上し、売上が前年を上回っている。
21年以降の戦略としては感染症の拡散防止などの「守る」取組、ネットスーパーの強化、新業態〈ビオラル〉の首都圏進出などの「攻める」取組、三密の防止や働き方改革などの「変える」取組を進めていく。販促については、短期の特売などの三密を生みやすい施策は手控え、クラスターの防止に努める。
岩崎高治社長は、「2020年は巣ごもり需要の拡大で好調に推移した。ただし、第2Q以降は徐々に消費行動が従前の状態に戻り、売上の伸長もスローダウンしている。21年はお客様と従業員の感染防止を第一に、市場の変化に対応しながら事業を運営していく」としている。
ヤオコーの2020年度(同)の既存店ベースの売上高は、第1Q同119.5%(同92.0%)、第2Q同113.6%(102.3%)となり、直近の11月は同111.2%(同93.2)%で推移した。
川野澄人社長は、今後の戦略について「9月の連休以降、消費者の動向が従前の状態に戻りつつある。秋口から消費者がチラシ連動型の特価販売を重視する傾向が見られるので、21年はEDLPと共に特売も強化していく」としている。
「冷凍食品(100+1)」周年ロゴ発表 ―― (一社)日本冷凍食品協会
(一社)日本冷凍食品協会は12月21日、「冷凍食品(100+1)」周年ロゴを発表した。
冷凍食品(100+1)周年ロゴのデザインは、強調した「+1」と「THE NEW CENTURY」が一体として冷凍食品の新世紀の第1歩を表し、これからの発展と進化を表現している。
2020年は、100周年に当たり、冷食協では様々な活動を展開してきた。
2021年は、101周年に当たり、過去100年にわたる日本の冷凍食品の発展を踏まえ、これから新たな世紀が始まることから、(100+1)周年と位置付け、冷凍食品のさらなる進化を目指していく。
『冷凍食品年鑑』発刊
2021年版 業界人必携“白い年鑑”
冷凍食品新聞社は1月4日、業界唯一の『冷凍食品年鑑2021年版』(B5判・304頁)を発刊いたしました。
“白い表紙の年鑑”として皆様にご愛顧いただき、回を重ねること創刊第50巻目となりました。
2021年版の巻頭コーナーでは、冷食業界の各種指標、売上ランキング等をまとめたほか、20年の業界をコンパクトに振り返る「業界日誌」を収載しています。
また「総説篇」では、激しいライフスタイルの変化迎えて、これに伴う冷凍食品の消費変化、事業構造の変化を様々な角度から分析。生産、流通、マーケットごとに詳細に解説しております。
「企業篇」では、メーカー・問屋・輸入商社・関連企業の最新データを網羅いたしました。
定価1万8000円+税、送料実費。
お申し込みは、電話03-3359-9191、FAX同9190。または、ホームページまで(http://www.reishoku.co.jp/)。
冷凍食品新聞社