健康系の市場への定着進む ―― 20年春夏・業務用新商品

　2020年春夏業務用冷凍食品が出揃った。人手不足が深刻化する一方でニーズの多様化が進む調理現場に向けて、各社が時短・簡便対応の商品開発を引き続き強化した。自然解凍品の提案がさらに進むとともに、調理方法の変更による時短・簡便化が図られた。近年、各メーカーから積極的に商品投入が図られている健康訴求商品も徐々に広がっており、独自技術の活用により差別化を図るメーカーも出始めている。加えて、今年は東京五輪開催が予定される中、インバウンド対応のベジタリアン向け商品、ビュッフェ向け商品も投入された。ただし、新型コロナウイルスの影響により状況は一変しており、厳しい環境の中での商品提案となりそうだ。

　ニチレイフーズはハンバーグやコロッケなど定番の進化を図るとともに、野菜と肉をキット化して簡単オペレーションを提案する〈Vegedelica〉シリーズを新たに投入した。“野菜”をキーワードにした健康感のあるメニュー提案は近年、増えつつある。
　インバウンド需要に向けたベジタリアンメニュー〈for VEGETARIAN〉シリーズを投入したのは味の素冷凍食品。餃子や焼売といった同社の得意分野で展開を図る。
　ホテルビュッフェを狙った提案としてはテーブルマークが〈PSロールケーキ〉シリーズから2品を投入。キユーピーも新たにビュッフェ向け、和洋折衷メニュー4品を投入している。
　自然解凍品を充実したのが「魚（とと）豆腐」など魚系メニューを提案した極洋、小付け用やどんぶりの具を提案するヤヨイサンフーズ。ニチレイフーズも〈そのまま使える冷凍野菜〉に新アイテムを追加した。
　その他時短・簡便対応としてはテーブルマークが「お好み焼き（豚玉）」を油調対応とし大幅に調理時間を短縮。また、マルハニチロがノンプリフライ商品を投入する他、ヤヨイサンフーズが焼調整専用ノンフライ商品を新たに投入した。
　健康ニーズへの対応としてはシマダヤが機能性表示食品の「冷凍〈健美麺〉食後の血糖値上昇を抑える稲庭風細うどん」を、日本水産は“速筋タンパク”入りの「魚麺（うおめん）」など3品を投入し、技術力を活かした提案。またマルハニチロが〈おいしく糖質off〉新商品、ケンコーが「冷凍もち麦入り五穀のサラダ」を投入している。

メーカー春の販促

幸せそうな表情で表現

　ニチレイフーズは、今春新商品ニチレイ『極上ヒレかつ』のテレビCMに、女優の深田恭子さんを起用、新CM「あげません」編を18日から全国放送する。
　CMではとんかつ屋の看板娘に扮した深田恭子さんが、“揚げずに美味しい本格品質”を、サクッとした衣とやわらかなお肉の美味しさに包まれた幸せそうな表情と可愛らしい仕草で表現している。
　同社公式ホームページでは、CM本篇に加え、撮影風景や深田さんからのコメントなどを含むメイキング動画も紹介。
　新CMでは、深田さんがとんかつ屋の看板娘に扮し接客。「極上ヒレかつ」を注文する客に「あげません」と応答し、客を驚かせるという楽しい内容。揚げずに電子レンジアップするだけで専門店同様の本格ヒレかつが楽しめる「極上ヒレかつ」の特徴をユーモラスに表現した。

　日清製粉グループは2019年より展開している「ハッピーメニュー　Project」の一環として、グループの“ハッピーメニューアンバサダー”である女優の木村文乃さんを起用した新たなグループ広告第2弾を制作し、8日より全国で放映を開始した。
　今回のTVCMでは「ひとりひとりのHAPPY MENU」に焦点を当て、誰もが持つ、料理にまつわる体験や思い出をもとに「料理のしあわせ」を伝えていく。タイトルはHAPPY MENU TO YOU！ハッピーメニューレストラン篇（30秒）、同ハッピーメニューレストラン・メロンパン編（15秒）、同ハッピーメニューレストラン・ホットケーキ篇（15秒）、同ハッピーメニューレストラン・ナポリタン篇（15秒）。

一心不乱に食す

　マルハニチロは16日、家庭用冷凍食品〈WILDish〉シリーズの新ＣＭキャラクターに、現在、ＮＨＫ連続テレビ小説「スカーレット」に出演中の若手実力派俳優の伊藤健太郎さんを起用、同日よりテレビＣＭの放送を開始した。
　テレビＣＭでは、伊藤さん演じる会社勤めの青年が仕事を終え自宅に到着すると、せわしなくカバンを置き、冷凍庫から取り出した「WILDish焼豚五目炒飯」をレンジで調理。出来上がり後、文字通りワイルドに、一心不乱に食す姿は必見。ＣＭ楽曲には、注目の5人組ロックバンドSurvive Said The Prophet（サバイブ・セッド・ザ・プロフェット）の「Calm：Unison」（カームユニゾン）が使用されており、疾走感あるメロディがより食欲を駆り立てるような仕上がりになっている。

　味の素冷凍食品は、家庭用冷凍食品の「洋食亭ジューシーハンバーグ」、「同和風ハンバーグ」の10g増量品を3月下旬より約1カ月の期間限定で、全国で順次発売する。
　増量品発売で、生活者の購買意欲を促進し、冷凍食品市場の活性化を図る。
　商品概要は、「洋食亭ジューシーハンバーグ」（175g［165g＋10g］）、「同和風ハンバーグ」（170g［160g＋10g］。2品ともハンバーグを10g増量。
　発売期間は3月下旬より約1カ月の期間限定。

Ｍ＆Ａ寄与などで増収 ―― トーホー・1月期

　トーホーは11日、20年1月期決算を発表した。
　連結業績は売上高2312億6600万円（前期比6・2％増）、営業利益14億3300万円（同12・5％減）、経常利益15億1800万円（同13・4％減）、当期純利益4億7400万円（同44・1％減）となった。売上高は2期連続の増収。Ｍ＆Ａの寄与や既存のディストリビューター事業会社がけん引した。利益面では、営業利益は3期連続の減益。物流費の上昇や設備投資に伴う減価償却費の増加が影響した。営業利益減に伴い経常利益、当期純利益も減益となった。
　セグメント別のディストリビューター事業（業務用卸売事業）は売上高1568億6300万円（同9・6％増）、営業利益12億4000万円（同13・4％減）。売上高はＭ＆Ａの寄与、既存事業会社の堅調な推移により増収。利益は物流費の上昇で減益となった。ディストリビューター事業では、展示商談会を通した提案、ＰＢ商品の開発・リニューアルなどを進めたほか、19年2月に㈱トーホー・共栄、㈱ハヤマコーポレーションと合併。関東地区のシェア拡大のため、同3月に関東食品㈱を連結子会社化した。また需要増への対応強化でトーホーフードサービス三郷ＤＣ（埼玉）、同習志野ＤＣ（千葉）を開設した。
　キャッシュアンドキャリー事業は売上高399億7500万円（同1・5％減）、営業利益3億9100万円（同18・4％減）。売上は閉店4店舗などの影響で減収。
　食品スーパー事業は売上高197億円（同5・2％増）、営業損失3億4400万円（前期は3億7100万円の損失）。既存店の競合激化で減収。利益も商品力強化、ロス管理強化などで売上総利益率を改善し、収支改善した。フードソリューション事業は、売上高147億2700万円（同11・1％増）、営業利益1億4600万円（同49・8％増）。ＦＭＩ、総合建設請負、新規事業（せんとば）等の売上伸張で増収。利益は総合建設請負の収益力向上、せんどばの収支改善で増益となった。
　今期連結業績予想は売上高2300億円（同0・5％減）、営業利益11億円（同23・3％減）、経常利益11億5000万円（同24・3％減）、当期純利益2億円（同57・9％減）を見込む。新型コロナウイルスの感染拡大が主力の外食産業向け業務用卸売事業に影響を及ぼし始めていることを鑑み、現段階で想定し得る影響額として、売上高で60億円マイナス、営業利益で7億円マイナスを織り込む。