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「芝尾昭治の冷食見聞録」アーカイブス

第2回 芝尾昭治の冷食見聞録〈未来対談篇×ダイエー〉

 「芝尾昭治の冷食見聞録」アーカイブス第2回目は2020年8月10日付・9月7日付、冷凍食品新聞掲載の対談企画をお送りする。ゲストにダイエー関東事業本部デイリー部伊原泰弘マーチャンダイザーを迎え、同社の冷凍食品の販売状況、そして開発について聞いた。

芝尾氏(左)と浦橋氏
芝尾氏(左)と伊原氏

芝尾 まず、この連載でも特集した新店のイオンフードスタイル相模原店、5月リニューアルオープンのイオンフードスタイル船堀店とダイエーの最近の店舗を続けて拝見させてもらったが、本当に冷凍食品のマーチャンダイジング(MD)が素晴らしい。
コロナの影響もあり、外食が苦戦する中、どこがその受け皿になるかということに食品業界全体が非常に高い関心を持っている中、相模原店の韓国惣菜の提案などは消費者にとって非常に新鮮であり、興味深く感じるだろう。一昔前であればそういった新しい提案も「冷凍食品では・・・」と考えられていたが、今は新たな食の手段として冷食が選択でき、実際に食べて美味しいと感じることができる。冷食が新たなステージに踏み出していることを感じさせる売場に仕上がっている。新規カテゴリーの創出という点でも積極的なチャレンジが見られた。

伊原 新カテゴリー創出は売場の“編集”によるもの、また他部門で既にある商品の冷食化によるものという2つの考え方がある。
相模原店ではコロナの影響で家飲み需要が高まる中、既存品を編集することで新たにおつまみをコーナー化した。もうひとつの考え方は家庭用冷凍食品として市場にはでていないが、デリカテッセンなどで売れ始めているカテゴリーの採用であり、そこに着目したのが今回の韓国惣菜だ。 若者の間ではチーズハッドグなどが普通に食される一方で、なぜ中華惣菜がこれだけ充実していて、韓国惣菜がないのか。冷食でも韓国風海苔巻きのヒットする中、では当社であればどういう括りにすれば良いのかと考えた時、思い切って中華惣菜と並ぶような韓国惣菜をやってみたらどうかと考えた。
実際、取り組みを進めてから、珍しさもあり、ツイッター等のSNSで拡散もされ、そこからの問い合わせも頂いた。既存品の編集の仕方や、ゼロのものを一にする新規カテゴリー創出についてはメーカーを含め常に話はしている。

芝尾 今、メーカーとの取り組みという話がでたが、伊原さんが、どういった形で情報を得て、メーカーとともにMDを構築しているのかを教えてほしい。私がバイヤーだった当時はそれが勉強会でありチームMDという形で行われていたが。

●ゾーニングで変わる売場

伊原 メーカーとの情報共有の場は毎月1回、取引先会議という形で実施している。現在はコロナの影響でできていないが、当社の方針から市場概況、棚割り提案や補充残まで具体的なところまで共有している。
メーカーやベンダーからの提案はどうしても商品軸になってしまい単品最適の視点になりやすいため、実際に売場でお客様がどのように買い回りをされているかという現場感覚を持ち考えるように気をつけている。ゾーニングにより売場は全く変わる。「弁当惣菜」は本当にその括り方で正しいのか、「中華」と言うが、炒飯と餃子を一緒に置くべきなのかなど、疑問を持たなくてはいけない。
我々はセレクターではなく、バイヤーである。出す商品に対してのカテゴリー戦略があり、欠落が何なのか、なぜその商品が必要なのか、なぜ新発売するのか、そこを問い掛けた時に明確な答えがあって次につながる。

芝尾 確かにチャンスは売場にあり、そこはメーカーに感じてほしい部分だ。例えば、私はある店舗の改装オープン時、朝の8時から冷食売場の見えるフードコートで消費者の行動を観察していたが、15時~18時の動きが一番顕著であり、最も冷食を購入しているのが男性だった。これはメーカーがなんとなくは理解しているが見えていない部分で、プレゼンでは男性が増えているというデータは提示するが、実際にどういう人が買っているのか、どういった買い方をしているのかまでは理解しきれていない。売場で実際見ていれば見えてくるものもあり、その先のアイデアにも繋がってくる。

●2極化対応で優位性

芝尾 ここでイオングループとしての強みについても聞きたい。

伊原 PB・トップバリュには今、トレードオフ型の顕在ニーズを刺激する商品である「ベストプライス」と潜在ニーズを掘り起こす「CooKit」などの商品があり、この価格競争と価値競争の2極化で優位性を保てるのがグループとしての強みだ。また、スケールメリット、商品調達力、海外からの輸入品も含め他社にはできないような商品や物量ができるということは非常に大きなシナジーとなっている。

芝尾 PBでは今、冷凍野菜が非常に進化している。既に冷凍野菜は完成系ではないが充実している状況にあると言える。一方でまだまだ掘り起こしをしなければいけないカテゴリーももちろんあると思う。NBを含めた今後掘り起こしを進めるべきカテゴリーについてはどう考えるか。

伊原 魚のミンチやコメの代わりに食べるブロッコリー、大豆ミートなど冷凍の素材としてグルーピングして詰めていきたい。冷凍野菜に魚、肉を加え、冷凍素材として売っていった方がお客様の購買はいいのかなと感じている。

芝尾 船堀店もそういう流れになっていた。魚のミンチなど冷凍でなければなかなか、あのコストと品質は出せない。

伊原 あとは容量。2~3年前は単身者を意識し、小規格化を進めたが、今、逆にECがかなり台頭している中で大容量品がピックアップされている。買い物頻度の関係もあるが。買い物に時間をかけたくないという消費者心理はあり、大容量商品の品揃えを拡充している競争店が好調な要因の一つであると考察する。

芝尾 昔は大容量=業務用という認識ではあったがそうではなくなっている。

伊原 冷蔵庫についても現在調べているが、冷凍庫の比率はどんどん上がっており、冷凍でのストック比率も大きく増えている。

●デリカすべてを冷凍食品に

芝尾 それはホームフリージングの話ですね。家庭でのフリージングは冷食購入と対極にあるが、見方を変えれば、ホームフリージングが積極的に行われるということは冷凍食品にもチャンスがあるということ。
コロナ禍で家事に負荷がかかっている。家族の料理を作り、外食もできない。一方で働きながら、子育てもある。こういった状況の中、家事の時短を含め、美味しさという愛情をこもったメニュー提案はこれから冷食がやらなければいけないことだ。今後、デリカの商品を全てフローズン化するようなイメージで商品開発は進めていくべきであり、それはそう遠くない未来の話だろう。
 さて、ここで、現在、新型コロナウイルス感染拡大による非常に特殊な環境にあるが、コロナ以前の状況を含め販売状況を確認させてほしい。

伊原 当社の冷食では2年程前から「脱お弁当」を掲げながら伸長しているおかずを拡大してきた。商品価値を伝えることでおかずの売上構成比は24%ほどに伸びてきた。一方で弁当の構成比は10%までに下がっている。その結果、売上高前年比も115%と2桁伸長となっていた。そして上期のスタートであり、新しい棚割りでと考えていたところに新型コロナウイルスの感染拡大が重なった。売上高前年比は3月が140%、4月が138%、5月が132%、6月が126%となっている。
もちろんコロナとは関係なく、冷凍食品については売場を広げれば連動して売上も伸びていくという手応えは感じている。会社としてもデリカテッセンの拡大や生鮮の強化に次いでフローズンの強化を掲げている。フードロスの観点からも期待は大きい。

《2020年8月10日付 冷凍食品新聞より》

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芝尾氏
芝尾氏
伊原氏
伊原氏


●食シーン広がる船橋店

芝尾 船堀店については売場面積も広くやりたいことが全てできていると感じた。冷凍野菜だけで6枚ほどの扉を取り、NBだけではできないことを実現していた。オーガニックであれだけの品揃えができる企業はおそらくイオングループ以外にはない。レンジアップできるそら豆など知ってもらいたい商品が数多くあった。一方で輸入品も多く、日本の食卓にはパイ文化がないにも関わらず、キッシュなどにもしっかりと取組めている。こういった売場が実現できれば、今まで冷食の限られていたシーンや間口がかなり広がっていくだろう。

●可能性広げる一番の機会

伊原 冷凍食品にこんな商品もあるという可能性を知っていただくには、新規ユーザーが増えてきている今が一番よい機会だと思っている。価格だけでない価値を創造するには冷凍食品を広げていくための棚割りを構築し、メーカーが持つ素晴らしい商品をしっかりと提案することが、一番必要だと思っている。スピード感を持ってトライ&エラーを繰り返していく。小回りが利くのがSMの強みであり、どんどんチャレンジしていきたい。

芝尾 可能性を広げていくには今が一番の機会だとの言葉があったが、やはり幅広い商品へのトライアルが進む中で、手応えはかなり感じているということか。

●コロナ禍で油調品にも動き

伊原 このコロナ禍で特に感じた。例えば従来、油調商品の展開はなかなか難しく、業界的にもレンジアップでなければ売れないという常識があったが、在宅機会が増え、ホイップや冷食のパイシートが売れているように、油調商品もどんどん伸びており、可能性は広がっている。レンジ調理で一人前、低価格でなくては売れないという従来の考え方は払しょくされ、フェーズはどんどん変わっていると感じている。

芝尾 コロナ禍でなかなか難しい状況にはあるが、売場からの消費者に対する情報発信という点で現在進めている取組みなどについても聞かせてほしい。

伊原 いちかわコルトンプラザ店ではメーカー9社で売場を作りマネキンを配置したフェアを実施している(8月6日~9日実施)。
 芝尾さんがダイエー新浦安店でスタートし、今ではイオングループにおいて全国規模で行われるようになったフローズンフェアについては現在、ダイエー店舗での実施はないが、何とか復活したいと考えている。

●今だからこそ魅力発信を

芝尾 フローズンフェアはスタートから既に25年程経つが、当初はダイエー社内でも冷凍食品の優先度は高くはなく、ひとつの挑戦であった。今の食品における冷凍食品の優先度の高さは、歴代のフローズンのバイヤーの努力の結果、そして時代の変化によるものだろう。
ダイエーはフローズンフェアの原点であり、まだまだ新しいメッセージは発信できる。今だからこそできる冷凍食品の魅力の伝え方をぜひ研究してほしい。
また、御社が持つ189店舗の販売データはメーカーから見れば宝物であり、ぜひそこは情報共有していただきたい。業界の発展には店舗、メーカー、卸のネットワークが必要であり、コロナ以降どう収集したデータを活用していくかが重要になるだろう。
 一方で小売りとして卸、メーカーには何を求めていきたいと考えているのか。

伊原 我々小売りも含め、つい商品起点の発想となりがちだが、マーケットインの視点で、しっかりと情報収集をして食品全体の流れや社会情勢とリンクした提案を行っていかなくてはならないと考えている。

芝尾 繰り返しになるが、やはりダイエーの近年の冷凍食品売場を見るとそこには非常にバイヤーの意思が明確に表れている。こういった売場を実現できるのはフローズンに対する期待の大きさがあってこそのものだと思うが。

伊原 確かにフローズンというカテゴリーに対しての期待は大きい。売場拡大についても話は進んでおり、従来型の多段ケースはリーチインケースにしていく計画だ。
また、当社においては生鮮を含めたロングライフ化がキーワードになっており、コロナ禍では「健康」「免疫力」「日持ち」「価格」の4つに注目が集まっている。フローズンはその全てを揃えており、重点管理カテゴリーとなっている。


《2020年9月7日付 冷凍食品新聞より》


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