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「芝尾昭治の冷食見聞録」アーカイブス

第1回 芝尾昭治の冷食見聞録〈未来対談篇×CGC〉

 「芝尾昭治の冷食見聞録」アーカイブス第1回目は2020年5月11日付・6月1日付、冷凍食品新聞掲載の対談企画をお送りする。ゲストにシジシージャパン浦橋健次郎日配事業部冷食チームチームリーダーを迎え、同社の冷凍食品の成り立ち、そして開発について聞いた。

芝尾氏(左)と浦橋氏
芝尾氏(左)と浦橋氏

芝尾 CGCグループは同じ理念・目的を持つ独立した意欲的な小売業が協業したコーペラティブ・チェーンであり、全国各地の208社4118店が加盟。今や日本最大規模の協業組織だ。その中でも冷凍食品分野は近年専門チームを立ち上げ取り組みを強化、積極的な商品開発を進めている。
 現在に至るまでのグループにおける冷凍食品事業の成り立ちについて、まずは伺っていきたい。

浦橋 CGCの冷凍食品の歴史は当社が設立された1973年まで遡る。当時の塩干冷食部カテゴリーのひとつとして始まった。スタートは中国・台湾からの枝豆を中心とした冷凍野菜、続いて米国産のポテトやミックスベジタブルだ。当初は基本的には輸入品をメインに展開してきた。中国・台湾が主力の生産国になり惣菜、唐揚なども作り始めた。

芝尾 CGCの冷凍野菜の原型を作り上げたのは、現在、監査役となっている小林桂一氏だと伺っている。CGCの冷凍のはじまりにおいて、ご苦労して海外商品を持ってきた。

浦橋 はい、そして私が入社したのが2003年。当時は冷食の月間の卸金額が2億円程、年間で30億程だった。その後、メインの輸入先はほうれん草の残留農薬問題によりタイにシフト。ここまでがCGC冷食事業の第1期となる。
13年には冷凍食品を従来の和日配チームから分離していこうということで「冷食ユニット」を新たに立ち上げた。そこからが第2期であり、輸入中心から、米飯やおかずシリーズなど国内品の開発にも広がりを見せたが、なかなか消費者には受け入れられなかった。
そこで、16年にはより専門性を持って冷凍食品に取り組んでいこうということで、「冷食チーム」がスタートした。立ち上げ時は「冷凍食品とは何か」ということから見つめ直すため、芝尾さんにも指導いただいた。冷凍食品の歴史から、カテゴリー・品揃えの考え方を勉強会で学び、モデルとなる棚割りを作っていった。そこから棚割りをどうするかということを前提に商品開発を進めてきた。

●トップの意向で発足

芝尾 CGCグループの中では冷凍食品はまだ伸びしろがあるように感じるが、「冷食チーム」を発足し、現在までの強化に至った理由は。

浦橋 堀内淳弘代表の「冷食は今後伸びてくるのでもっときちんと商品開発ができなければいけない」という意向によるものだ。そこで「冷食チーム」が立ち上げられ、冷食強化が始まった。

芝尾 トップ自らが立ち上げたとなると、間違いなくやりがいもあるし、もちろん結果を出すことも求められる。

浦橋 プレッシャーはあった。トップはアメリカ等海外の売場も視察する中で、冷凍食品はもっと伸びていくはずだという思いは常々あったと思う。

芝尾 私もイオンに出向していたが、グループの冷食強化が進む中で、トップのやる気次第でブランドや売場の規模感も変わってくることを実感した。

浦橋 私たちは冷凍食品をどうしても開発者側の視点で見てしまう。トップは加盟企業とのコミュニケーションが多く、地方の状況なども常に情報が入ってくるので非常にニュートラルな目で見ている。そのニュートラルな目で見た時、冷食はこれから絶対必要性が高まる来るという考えを持ったのだろう。

芝尾 私がイオン在籍時、岡田元也社長(当時)からメッセージとして受け取ったのは海外の売場を見ると、まだまだ日本の冷凍食品には伸びしろがあるということ。ピカールが10年、20年後には主流となるという長期的な視野でトップは見ている。
また食品ロスという点で、人口増加により食べ物がなくなった時に、一から作るのではなくストックしておけば間に合うという考え方、それらのことが非常に勉強になった。

●今や冷食はライフラインに

芝尾 さて、ここまでCGC冷凍食品事業の歴史について語ってもらったが、現状の販売状況についてはどうか。市場環境も含め、教えていただきたい。

浦橋 19年の9月、10月辺りから売上は上がってきている。新型コロナウイルスの影響も後押しして伸長しているが、なにかあったときに頼りにされることが増えている。重要なライフラインのひとつとなってきており、そういう意味では在庫をしっかり持ちながらやっていきたい。

芝尾 NBだけでなく、PBを取り扱う中ではなかなか商品を切らすわけにはいかない。今回、(新型コロナウイルスの影響が拡大といった)このような状況に対してはどのように対応されているか。

浦橋 メーカーさんは供給責任を果たそうと努力してくれている。当社としては頻繁に取引メーカーを変えるのではなく、10年単位でメーカーと取組みを進めていくようにとトップからつねに言われている。こうした付き合いがこういう時(コロナ下)は強みになると考えている。
2020年度の着地見込みは115~120%、2019年度は112%の73億円なので売価ベースで100億が見えてきた。

芝尾 現在、新型コロナウイルスの感染拡大による影響で冷凍食品が大幅に伸びているが、東日本大震災時はトライアルが増え、リピートに繋がった。先ほどのお話にもあったように今や間違いなく何かがあれば伸びていくカテゴリーであり、冷食チームとしてそれに見合う品質が求められている。
開発については今後どのカテゴリーを強化するか迷う所ではないか。

浦橋 現状、思うのは売場を変えたくても商品がついてきていないということ。商品が変わらなければ売場は変わらない。特に冷食はNBと開発の方向性があまりにも似ている。同じような商品が同じようなタイミングで発売されるということに非常に不満がある。

芝尾 メーカーは同じマーケティングをやるので、同じ商品が出るのはある意味仕方がない。しかし、流通は売場を握っているので様々な組み合わせができる。メーカーはMDをなかなか作れないが、売場はMDを作れる。そのMDの差が競合スーパーとの差別化ポイントになっていく。

●スカスカ撲滅で効率アップ

 その中でCGCグループが大成功しているのは冷凍野菜ではないだろうか。縦パッケージ化もそのひとつ。NBでは縦型化をしたくても、様々な事情でなかなかできない。量目を含め縦型化に踏み切ったことは英断だ。お客様の要望がうまく拾えていると感じた。

浦橋 我々は「スカスカ撲滅」という活動に取り組んでおり、そこには物流や包材など無駄なコストの削減という考えは当然あるが、売場効率も高める効果があるということに気づいた。
加盟店の中にはそれほど大きな売場を持たないところもある。いかに売場効率を上げていくかという必要最低限のSKUだけを置いていくことを考えた時に非常に有効な手段だと感じた。結果として得たものが、品揃えであり、これは大きな数字になっている。3割以上SKUが増えている。お客様の満足感も違う。売場をいかにうまく使っていくかということを考えるきっかけになった。

芝尾 ひと昔は大きなものが売れるという常識があった。それが長い間続き、ここにきて環境問題への配慮などから無駄なことはやめようという考え方になってきた。「スカスカ撲滅」運動といった形でそれを実現したCGCは非常に先見の明があったと感じている。それにしても、3割もアイテム数を増やせるとは。

浦橋 売上は(変更前と比較して)115%ほどであり、SKUの増加によって単品の売上はやや落ちるが、売場効率が上がるため加盟企業の評価は高い。

芝尾 CGCからすれば店舗の棚バランス良く売上を上げるという気持ちでいるからそういう発想ができるのだろう。
商品面でもうひとつ伺いたいのは、昨年の展示会でも紹介されたミールキットへの積極的な取り組みだ。昨年より宅配含め、多くのチェーンで取り扱いが進んだ。

浦橋 ミールキットはしっかりやっていこうと考えている。現在は留型で展開しているが、CGCグループの中で非常に強い原料を生鮮部門で持っており、そういったマスメリットのある原料を使ったミールキット化にまで持っていきたいと考えている。「原料」がひとつのキーワードとなる。

●キット品は試食の効果大

 また、ミールキットで特徴的なのは店舗で試食販売することで非常に売れる。今は新型コロナの影響で実施は難しいが試食の翌日から数字は変わる。やはり食べていただかないとわからない。新型コロナによる内食需要の拡大でミールキットは非常に売れているが、今回のトライアル増を機に今後さらに伸びていくと考えている。

芝尾 試食まで店頭でやるというのは凄いし、間違いなく売れる。私はダイエー時代にフローズンフェアという冷凍食品の試食イベントをはじめたが、マネキンが試食販売するよりも、実は営業マンが試食販売した方が売れる。作ったメーカーさんの意見には説得力がある。苦労話も伝えられるというメリットもある。
そういう意味ではCGCとしてはまずは入り口として加盟店のバイヤーにしっかりと商品の美味しさを理解してもらうことが大切になるのではないだろうか。

《2020年5月11日付 冷凍食品新聞より》

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芝尾氏
芝尾氏


芝尾 今後の開発の方向性について確認したい。

浦橋 冷凍食品の品揃えは現在PBが63品、WBが3品。アイテムは増やしていきたいと考えている。あくまで消費者目線で今、市場に必要なものを作っていきたいと考えている。 特にカット済み、ボイル済みなど一段下ごしらえが進んだ冷凍野菜はもっと開発していかなければと考えている。またポテトや弁当、ワンプレート品などのレンジ対応品はさらに増えていくだろう。

●PB ノウハウ・技術力に期待

芝尾 PBを今後増やすということだが、サプライヤーの選別についてはどのように考えているのか。

浦橋 まずは大手。やはり大手が持っているノウハウはすごい。そして技術力のあるサプライヤーと開発を進めていきたい。

芝尾 気になるのは、私が在籍していたダイエーでも店舗の数だけ冷凍食品売場があった。100店舗あれば100パターンあり、パターン通り仕立てないと店はできない。私はそのことに気づき100パターンの売場を作ったが、非常にパワーが必要だった。CGCグループにおいては加盟店ごとに考え方や冷凍食品の位置づけも違い、規模感ももちろん違う。その中で、棚割り提案する苦労はないのか。

浦橋 それはすごくある。現在は本部で全てを管理するわけではなく、指定帳合ということで三菱食品様と日本アクセス様に棚割りを理解してもらい、実践してもらうということを進めている。

芝尾 卸を巻き込んでチームとして考えていくということですね。
さて、冷凍食品を取り巻く市場環境を見ると、現在コンビニやドラッグストアがスーパーのライバルになろうとしている。コンビニ、ドラッグの冷食は卸がマネジメントを行っており、CGCが行っているようなバイヤー機能はあまりない。しかし、やがてコンビニ、ドラッグといった業態も必要性を感じて自ら冷凍食品に取組んでいこうという考え方になっていくと思う。そういう意味では単純に競争相手ということにはならないかもしれないが、他業態についての情報取りやどう対応すべきかを判断する機能がより一層必要になる。
そういった競合対策として本部としての加盟店へのアプローチはどのように行っているのか。

浦橋 グループとしてのスタンスは決まっているのでブレることはない。「便利」や「楽」という言葉は冷凍食品のキーワードとしてよく使われるが、そこだけではなく、料理をする人を応援していくということが業界としての差別化になるとまず考えている。業態としてコンビニやドラッグとどう差別化していくのかというと、まずは生鮮と惣菜。ただ、もちろん冷凍食品でも差別化は必要であり、では、そこでどうするかというと料理をする人を応援できる商品を提供することを第一優先に考えている。そのひとつがミールキットであり、下ごしらえ済み冷凍野菜は調理時間短縮だけでなく、ゴミが出ないので環境にも配慮した商品だと考えている。 もっと色々な使われ方が増えてくるといいなと思っている。レンジでチンしてすぐ食べられますよという形のものしか今はできていないので、そういったものを提案していきたいと思っている。色々なライフスタイルの人が増えていくのであれば、料理でさらにその生活の質を向上させたい。

芝尾 今、挙げていただいた部分はPBで尖らせていきたい領域であり、NBではレンジ調理だけで出来上がる完結型の商品を用意するがそれプラス料理をサポートする冷凍食品のジャンルを作りたいということですね。

●素材から一段上の商品を

浦橋 色々な段階があると考えていて、例えば炒飯なら今、レンジで全てが出来上がるが、業務用にはベースライスのようなものもある。最終の仕上げを自分でしたいという人ももっといるのではないかと思う。

芝尾 日本ハム冷凍食品ではソース付きのハンバーグよりも素焼きのハンバーグの方が売れたという。素焼きだから、自分次第でどのような味付けにもできるという使い勝手の良さが売れた秘訣だという。まさにサポートする役割の商品は今後ますます求められるだろう。冷凍食品は素材から付加価値を上げていくことでまだまだ伸びていく。
私がCGCさんの仕事を見ていて思うのは加盟店のために非常に丁寧な仕事をされているなということ。今後も安心して加盟店さん、またその先の消費者が買っていただけるPBを広げることが差別化になる。ますます存在価値を高めていっていただきたい。

《2020年6月1日付 冷凍食品新聞より》


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