KA、海外が順調推移 ―― 味の素冷凍食品・寺本社長

左から杉田常務、寺本社長、笹崎経営企画部長
味の素冷凍食品は5月22日、東京・銀座の同社本社で24年度業績を発表した。微増収減益となった今回の決算はキーアカウント(KA)や海外が順調に推移し、フードサービス(FS)に回復基調が見られる一方で、リテールが苦戦。今期は3月に実施した値上げによる利益面の改善を図っていく。寺本博之社長はKA、FSで同社が目指してきた課題解決型のアプローチへの手応えを語るとともに、「課題はリテール」とし、国内では冷食のさらなる付加価値化を目指していく方針を明らかにした。
24年度実績は売上1031億円(前年比2%増)、事業利益62億円(同19%減)、BP率6.0%。計画に対する進捗率は売上92.2%、事業利益82.9%。事業別の売上高前年比は家庭用が98%、業務用が98%、KA108%、国内および海外の状況では日本国内が100%、海外が117%となった。25年度見込みは売上高1094億円(同6%増)、事業利益74億円(12億円増)、BP率6.8%(0.8pt増)。
寺本博之社長は前期実績について「業績については微増収減益。キーアカウントと海外は売上利益ともに非常に順調、FSも一昨年実施した値上げの影響が昨年上半期まで残ったが、下半期は盛り返した。回復基調と言える。一方でリテールは競争がさらに激化。PBが伸長し低価格志向に拍車がかかり始めている。そういった意味で当社の取るスタンスはアゲンストの風を受け売上減少が継続している」とした。
なお利益を圧迫する要因として原燃料コスト高騰、為替影響の2点を挙げ「年間で14億円ほど減益になっているが、うち10億円が上期、それを下期で挽回しきれなかったのはリテールで伸ばせなかったことにある。一昨年の値上げ時に数量ダウンが想定を上回ったため、他社が値上げをする中、昨年当社は値上げを見送った。起こるべくして起こった減益だと考えている」とした。
利益面の改善に向けては「3月に値上げを実施しており、ここで打ち返す計画だ。為替はフォローにもアゲンストにもなる。大事なことは事業構造が大きく影響を受けていないかだ。為替の影響を軽減するための策としては原材料の調達力をもう少し強めていきたい」としている。
課題解決型の提案に手応え
また、3年前の自身の社長就任から現在までを振り返り、「様々な部分で手応えは感じている。今、取り組んでいることが少しずつ成果として現れ始めた。味の素グループのリソースを駆使して、顧客と対話し、課題を解決するという課題解決型のアプローチがKA、FSチャネルに浸透し始め数字に表れてきた。一方で課題はリテール。原材料や品質管理のコスト、製造人件費のアップへの対応等適切な価格設定に対応させていただいているとは言い難い。この状態に対し、FFAがやるべきことは冷凍食品の付加価値化、価値に見合った価格を牽引すること。国内市場においては長期的な視点で人口減少、高齢化、労働力不足、デジタル化をフォローウインドに変えてサステナブルに成長できる事業モデルへの変革を図っていきたい」とした。
SMTS、冷凍食品ゾーンを新設 2027年から年2回開催に
全国スーパーマーケット協会など3団体は21日に都内で会見を開き、2026年2月18日~20日まで開催する「スーパーマーケットトレードショー」(SMTS)で、「食のトレンドゾーン冷凍×食」の規模を拡大し、「冷凍ゾーン」として再構築する方針を明らかにした。冷凍食品関連のブースを集積し、主催者企画「日本全国!ご当地冷凍食品対象2025─2026」を実施する。「地方・地域産品ゾーン」とのコラボレーションで、ご当地の食材、メニュー、食文化などを活かした地域の特色のある冷凍食品を審査・表彰する。
なお、SMTSは27年から2月、7月の年2回開催となる予定。7月は生鮮3品とデリカの、2月はそれ以外の商品とソリューションを中心に紹介する。
全国スーパーマーケット協会の吉沢敦事業部流通支援課チームリーダーは「SMTSが年2回の開催に移行した際に、2月の展示会では冷凍食品が核の一つになる。そのため1年前倒してエリアを拡大した。魅力的な企画を実施して展示会を盛り上げていきたい」と語った。
センコーと包括業務提携 ―― マルハニチロ
マルハニチロは5月26日、物流大手のセンコーグループホールディングスと包括的業務提携契約を締結したと発表した。両社は、物流分野を中心に非物流領域にも協業を広げ、企業価値の更なる向上を目指す。
マルハニチロは創業145年を迎える節目の年に、「For the ocean for life~海といのちの未来をつくる」という新たなパーパスを掲げ、地球規模での持続可能な食の提供に取り組んでいる。一方、センコーは「未来潮流を創る企業グループ」をビジョンに掲げ、物流を核としつつ、商流やライフサポート等多角的な事業展開で成長を続けている。
今般、両社の保有する経営資源を有機的に連携させることを通じて、物流機能の持続性の向上及び強化、ならびに非物流分野の共創を通じた企業価値向上を目的として業務提携を締結したもの。
業務提携では、両社が共同または協力して行う「物流」に関わる一連の業務として①センコーの保有する輸配送機能の共有②両社が保有する物流拠点の相互活用③物流に関するノウハウの相互提供④センコーが保有する人材派遣機能の活用や人材教育システムの共有⑤海外事業に関わる共同での戦略推進⑥その他以外の物流に関する事項。
両社が共同または協力して行う「物流以外」の業務では、①センコーの進める学童保育、介護、フィットネス事業等との協業を通じた新商品開発や新サービスの開発②各種施設、外食等への食材提供及びフィードバックによる商品開発やサービス開発③その他相互アセットの掛け合わせによる協業。